40年以上前にゴアテックスが登場してから、登山用の性能が良くておすすめのレインウェアは、常にゴアテックス素材のレインウェアでした。近年レインウェアの新しい素材開発されたり、ゴアテックス自体も改良されたりしています。
現在でも最強の登山用の素材はゴアテックスなのでしょうか?
30年以上の山やアウトドアにかかわっている経験から、どの素材がおすすめなのか? どのメーカのどの製品がおすすめなのか? などについて考えてみました。
日程が決まっている山行や、数日かかる縦走では、多少天気が悪くても、雨の中を歩くことになります。こんな時の登りは、身体からは大汗がでるし、外側は雨が降りつけます。最悪な状態です。
こんな時に優秀なレインウェアがあると、山行はとても楽になります。でも優秀なレインウェアってなんでしょうか? レインウェアに必要な性能を明確にして、どの素材がベストか考えてみます。
レインウエアに必要な基本性能は、防水性、透湿性、撥水性、重さの4点です。もちろん他にも選択の基準になる耐久性、防風性、デザインなどもあります。
撥水性を除く項目については、多くの信頼の高いブランドではこれらの値を公開しています。幾つかの有名なブランドでは記載されていないものもありますが・・
防水性
防水性は、水が内部に浸入するのを防ぐ機能です。この値が高ければ高いほど防水性能が高いということになります。登山で使うなら耐水圧20,000㎜以上のものが必要と言われています。
透湿性
透湿性は、体から出る汗などの水蒸気を外に逃がす機能のこと。透湿性があると、汗をかいてもベタつきや蒸れを感じにくくなります。登山で使うなら10,000g/㎡・24hrs以上のものががおすすめです。
撥水性
撥水性は、生地の表面で水を弾く機能のことです。水分が生地についたときに、転がり落ちて生地が濡れにくくなるもので、この撥水性が低くなると透湿性も下がります。撥水性については各社数値で表現されていません。
重さ
登山を楽しむのに荷物の重さは大きな要素です。同じ性能であれば軽い方が確実に選ばれます。また重さを気にしなければ性能の高い素材が使えたりします。
我が家のレインウエアです。モンベル ラインダンサー(上下)右側とモンベルバーサライト中央(下)、左( 上)です。軽登山で天気に心配がないときはバーサライト上だけを持っていきます。重さは134gと軽量でとても楽です。防寒着にもなります!
ゴアテックスは、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が作るテクノロジー素材の名称です。ゴアテックスは、水滴より小さく水蒸気より大きい穴が1平方インチあたり90億個も開いています。これにより雨を通さずに汗を外に出すことができます。
現在、ゴアテックスの種類は4種です。ゴアテックスのHPはこちら
GORE-TEX、GORE-TEX Pro、GORE-TEX ACTIVEは、防水性を重視した従来型のゴアテックスです。
GORE-TEX
最もスタンダードなゴアテックスです。。タグに特に名称の記載がないものはこのスタンダードタイプです。GORE-TEX Proほど重たくなく、GORE-TEX ACTIVEより耐久性が高い、バランスのとれたゴアテックスです。ウェアの目的に応じて、2層または3層構造が使われています。
GORE-TEX Pro
ゴアテックスのハイエンド製品がGORE-TEX Proです。3層構造になっており、耐久性・防水性ともにゴアテックス素材の中で最高です。冬山登山をはじめとする過酷な環境下での活動を想定しています。
GORE-TEX ACTIVE
ゴアテックスの中で透湿性に重きを置いているのがGORE-TEX ACTIVEです。登山を始め、クロスカントリー、トレイルランニング、マウンテンバイクなど、激しい運動をする用途に向いています。生地が薄く他製品と比較すると耐久性は低めですが、3レイヤー構造で肌触りが良く、軽くて薄いので日常使いのジャケットとしても便利です。
GORE-TEX INFINIUM
2018年に誕生した比較的最近の素材です。ゴアテックスの防水性の縛りを解放してそれ以外の透湿性や防風性に特化した新ブランドです。とはいえ実際にこの素材を使ったレインウェアの仕様を確認すると、それなりの防水性を保持しています。
ゴアテックス素材では、防水性、透湿性などでは十分に基準を満たしています。より余裕がある方がより過酷な状況を快適に過ごすことができます。あまり過酷な状況では使用しない人にとってはゴアテックスはオーバースペックかもしれません。
総合性能を考えた場合、結論は、現在のところゴアテックスに並ぶ素材はありません。ゴアテックスの弱点は、なんといってもその価格が高いことです。またゴアテックスの種類や求める仕様によっては、その風合いや伸縮性、着心地などが課題になりそうです。
各ブランドの防水性と透湿性
各ブランドの中で防水性と透湿性が明示されているもの表にしてみました。
ブランド | 素材 | 防水性(mm) | 透湿性(g/㎡・24hrs) |
モンベル | ドライテック | 20,000以上 | 8,000~20,000 |
ミズノ | ベルグテック | 30,000以上 | 16,000 |
ミレー | TYPHON 50000 | 20,000 | 5,000 |
ファイントラック | エバーブレス®フォトン | 20,000以上 | 10,000 |
モンベル | ストームクルーザー ジャケット (ゴアテックス) |
50,000以上 | 35,000 |
登山用レインウェアの目安は防水性20.000mm、透湿性10,000g/㎡・24hrs以上のもです。
表の最下段に参考にモンベルのゴアテック素材のストームクルーザジャケットを載せました。ここだけの比較では圧倒的な性能だと分かります。
この表以外にも有名な素材として、ザ・ノース・フェイスのハイベントやフューチャーライト、パタゴニアのH2NO、コロンビアのオムニテックなどがあります。それらの素材の防水性、透湿性は非公開になっています。各社ともレインウエアとして実績がある素材ですが、ゴアテックスと比較できない事情もあるようです。
最近の傾向では、着心地を重視する視点も強くなっています。これらの中でも、TYPHON 50000やエバーブレス®フォトンは高いストレッチ性をうたっています。ザ・ノース・フェイス フューチャーライトやわらかな素材感が特長とのことです。
◆その他の素材の状況
・防水性と透湿性だけを切り取ると現状ゴアテックスが最強です。
・新しい指標として着心地(ストレッチ性、風合い・・)が売りになっています。
イーベントのその後は?
少し前に話題になったBHAテクノロジー社によって開発された透湿防水素材イーベント(eVENT)は、特に当時、透湿性能がゴアテックス以上ということでゴアテックスに代わるのではないかと言われていました。
ゴアテックス側の改良やイーベントが(も)高価であることから、現在主流になっているブランドには、ほとんど採用されていないようです。
実際にレインウェアを購入するときは、そのブランドの知名度や口コミ、デザイン性などで選ぶことも多いと思います。今回は、選択のポイントとなる防水性、透湿性、重量などを公表しているブランドを中心レインウェアを紹介します!
モンベルは山やアウトドア好きの人が皆知っている日本の総合アウトドアブランドです。複数のタイプのレインウェアを扱っています。
特徴は、積極的に新しいもの、良いものをいち早く取り入れていることです。私も愛用している発売された当時、世界最軽量と話題となったバーサライトの素材はドライテックでしたが、GORE-TEX INFINIUMが発売されると、素材を変更しました。現在のバーサライトは、GORE-TEX INFINIUMを使用し、更に性能をアップさせました。
呼称 | 素材 | 耐水性(㎜) | 透湿性 (g/㎡・24hrs) |
重量(g) (g/㎡・24hrs) |
価格(税込み) |
ストームクルーザー | ゴアテックス ファブリクス3レイヤ | 50,000以上 | 35,000 | 449 | ¥37,730 |
バーサライト | ゴアテックス インフィニアム™ ウインドストッパー® ファブリクス | 30,000以上 | 43,000 | 244 | ¥27,500 |
レインハイカー | ドライテック®2レイヤー | 20,000以上 | 8,000 | 448 | ¥14,080 |
モンベルはジャケットとパンツを別々に購入することができます。表の重量と価格はジャケットとパンツの合計です。
ミズノは総合スポーツメーカーで色々なスポーツの用品を扱っています。意外な感じもしますが、このミズノのレインウエアはアウトドア用途で人気と実績があります。
ミズノ ベルグテック
呼称 | 素材 | 耐水性(㎜) | 透湿性 (g/㎡・24hrs) |
重量(g) | 価格(税込み) |
ストームセイバーVI | ベルグテックEX | 30,000以上 | 16,000 | 550 | ¥15,950 |
ミレーは1921年にフランスで誕生しました。長い歴史を持つブランドで日本でも登山用のザック、ウエア、靴などで人気があります。
呼称 | 素材 | 耐水性(㎜) | 透湿性 (g/㎡・24hrs) |
重量(g) | 価格(税込み) |
ティフォン 50000 ストレッチ ジャケット・パンツ | TYPHON 50000 | 20,000 | 5,000 | 532 | ¥49,500 |
ファイントラックは2004年に創業した日本のアウトドアブランドです。ウエア、寝袋、テントなどが人気です。
呼称 | 素材 | 耐水性(㎜) | 透湿性 (g/m2・24hr) |
重量(g) | 価格(税込み) |
エバーブレスフォトン | エバーブレス | 20,000以上 | 10,000以上 | 485 | ¥42,900 |
現在話題になっているワークマンのレインウェアを取り上げておきます。ハイキングやキャンプなどでは十分に使用可能レベルです。女性用ではオシャレなデザインや色のものもあります。紹介したものは男女兼用のものです。
透湿性は数字上はミレーと同レベルです。
呼称 | 素材 | 耐水性(㎜) | 透湿性 (g/㎡・24hrs) |
重量(g) | 価格(税込み) |
ストレッチ・透湿 レインスーツ | ポリエステル | 10,000 | 5,000 | ¥4,900 |
レインウェアの素材としては、改良版のゴアテックスも含めると最強であることが確認できました。軽登山やキャンプ用としてはオーバースペックぎみかもしれません。弱点はやはり価格が高いことです。
数年前に期待されていたイーベントは、採用した数社を確認したところ主流にはなれず、シュリンク気味です。また各社で開発した新素材たちは価格や着心地で勝負しているようです。
性能だけを追求すると高額なものになるので、どのフィールドでレインウェアを使うかで必要な性能も変わってくるので、最適なものを選ぶ用にしましょう!