昭和の一時期、第二次世界大戦の影響で、硬貨の質が低下した時期があります。我が家には、昭和11年から24年までの昭和の7個の硬貨があり、アルミニウムのおもちゃのような硬貨もあります。
昭和の激動の歴史と硬貨の関係を調べてみると、これらの硬貨はまさに、戦中の国内の苦しい歴史を物語っていたのです!
・戦前の硬貨 1銭青銅貨
・戦時中の硬貨 アルミニウムと錫の硬貨
・戦後の硬貨 黄銅の硬貨
・まとめ
昭和の硬貨の歴史
第二次世界大戦は、1939年9月(昭和14年)勃発し1945年9月に終戦になった、まさに世界を巻き込んだ戦争です。
材料不足の対応
日本国内では戦局悪化に伴う貨幣材料調達が厳しくなってくると、昭和13年に臨時通貨法により、臨時補助貨幣の位置づけで多くの硬貨が製造、発行されました。
この臨時通貨法により、臨時補助貨幣を発行できるようになり、素材、品位、量目及び形式は勅令(天皇の命令)で定められ、様式改正も勅令による変更が可能になったそうです。
実際には、銅や銀の硬貨は最初アルミの硬貨に置き換わり、その後アルミニウムも航空機の材料などに使用されはじめると、次は錫や亜鉛が硬貨の材料として使われるようになりました。
臨時補助貨幣のその後
この臨時通貨法が有効な時は、硬貨は臨時補助貨幣の位置づけで発行されていました。1988年(昭和63年)に臨時通貨法が廃止されると臨時補助貨幣も、一部を除いて貨幣と見做されることとなりました。
廃止されたのが、昭和63年なので昭和で発行されたほとんどの硬貨は臨時補助貨幣でした。
戦前の硬貨 1銭青銅貨
昭和11年発行の桐のデザインの1銭青銅貨です。まだ戦争が始まる前の硬貨です。この当時までは銅貨が作られていました。現在の10円硬貨に近いイメージです。
材質 | 銅 95%、錫 4%、アルミニウム 1% |
大きさ(径) | 23.03 mm |
重さ | 3.75 g |
発行期間 | 大正5年~昭和13年(1916~1938年) |
戦時中の硬貨 アルミニウムと錫の硬貨
戦時中の硬貨 前期
昭和16年の菊の図柄の10銭アルミニウム貨幣
戦争が始まると硬貨の材料がアルミニウムに代わります。この10銭は、戦前の1銭より、かなり安っぽくなってしまいました。
昭和18年になると、同じ図柄で径も同じ22mmで重さが0.2g軽い10銭が発行されています。そこまでしてアルミニウムを捻出したかったのでしょうか
材質 | アルミニウム |
大きさ(径) | 22.00㎜ |
重さ | 1.2g |
発行期間 | 昭和16~18年(1941~1943年) |
昭和17年の菊の図柄の5銭アルミニウム貨幣
この菊の図柄の5銭硬貨は、重さが1.2g ⇒ 1.0g ⇒ 0.8gと使用するアルミニウムの量を減らしていきました。我が家の5銭硬貨は中間期の硬貨です。
材質 | アルミニウム |
大きさ(径) | 19㎜ |
重さ | 1.0g |
発行期間 | 昭和16~17年(1941~1942年) |
その後、更に図柄を富士山に変えて、更に重さを 0.65g ⇒ 0.55gと減らしていきます。
戦時中の硬貨 後期
昭和19年の5銭錫貨幣
昭和19年になるとアルミニウムも軍事用に使用されると、錫や亜鉛を使用するようになります。当時占有していたマレーシアに錫の産地があったからのようです。
ここで穴あき硬貨になっているのは、材料の節約でしょうか、同時期の10銭硬貨も穴あき硬貨です。
材質 | 錫93.0% 亜鉛70% |
大きさ(径) | 17㎜ |
重さ | 1.95g |
発行期間 | 昭和19年(1944年) |
昭和19年の1銭錫貨幣
昭和19年の1銭硬貨は大きさも品位も非常にみすぼらしい感じです。昭和20年が終戦ですので、日本もとても苦しい時期です。
材質 | 錫50%、亜鉛50% |
大きさ(径) | 15㎜ |
重さ | 1.3g |
発行期間 | 昭和19~20年(1944~ 1945年) |
戦後の硬貨
戦後になるとアルミニウムや錫の材料は底をついたのですが、軍がもっていた黄銅が多量にあることが分かり、ここから黄銅の硬貨が発行されるようになります。
変化したのは材料だけでなく、大日本の表記が日本国に変わっています。
昭和21年 鳳凰の図柄の50銭黄銅貨幣
この昭和21年発行の50銭は戦時中のものとは異なり、図柄や大きさ、重さなどにおいて、かなり立派な硬貨という印象です。でも発行期間はの実質は2年間で、昭和22年には一回り小さい50銭硬貨が発行されています。
材質 | 銅60%~70%、亜鉛40%~ 30% |
大きさ(径) | 23.5mm |
重さ | 4.5g |
発行期間 | 昭和21~22年(1946~1947年) |
昭和24 橘の図柄のの1円黄銅貨幣
この硬貨は現在の1円硬貨の前身なのですが、こちらの方が立派な感じです。図柄なども現在の1円に似ています。
材質 | 銅60%~70%、亜鉛40%~ 30% |
大きさ(径) | 20mm |
重さ | 3.2g |
発行期間 | 昭和23~25年(1948~1950年) |
穴なし5円黄銅貨幣(国会議事堂)
7個の硬貨以外ですが、同時期に発行された硬貨です。この硬貨を知っている人も多いと思います。なんとこの5円硬貨は現在でも使用可能な硬貨なのです。
現在はほとんど流通していませんが、私の子供の頃(昭和30~40年代)にはたまに見かけることがありました。
上記1円硬貨とこの5円硬貨はほぼ同じ発行時期ですが、この5円硬貨のみが使用可能な硬貨として残ったのは何故なのでしょうか?
材質 | 銅60%~70%、亜鉛40%~ 30% |
大きさ(径) | 22mm |
重さ | 4g |
発行期間 | 昭和23~25年(1948~1950年) |
まとめ
今回、我が家にある7個の昭和の硬貨を調べてみて、歴史が昭和の激動の歴史を少しだけ身近に感じました。
硬貨はその時代の背景を背負っていることが、よく分かりました。