冬山の緊張感や美しさは、何物にも代えがたいものです。何年経ってもその記憶は鮮明です。またその経験がプライドにもなっています。
会社の山の会でも、冬に山を登る人は段々減ってきています。冬山の素晴らしさを伝えるために、新人でも楽しく登れる唐松岳から五竜岳を目指しました。
ところが冬の北アルプスはそんなに甘くありません・・
この話はかなり前の話です・・冬山を楽しんで欲しいという思いと、冬山の教訓ということで書いてみました。
我々の前の世代には双璧ともいえる山や岩に強い2人の先輩がいました。その先輩も30代半ばになり、会社では一番忙しく期待される世代になり、あまり山に行かなくなり始めていました。
次の世代である我々も年齢的には、2~3歳差で、同じ状況になりつつありました。
何とかその次の世代をつくるために新人たちに、冬山の楽しさや美しさを伝えるために、冬合宿に後立山の唐松岳から五竜岳の縦走を選択しました。
冬でなければ、難しいコースではありませんが、何といっても冬は雪が多く油断できません。
目指す山にもよりますが、冬合宿の準備は2~3ヶ月かけて行います。
この時は、新人も多いということで
10/末 偵察山行
11/末 富士山の雪上訓練
12/初 岩稜訓練
12/中 ラッセル訓練
という計画をつくっていました。
偵察山行と雪上訓練には参加しましたが、その後は参加できませんでした。
年内に仕事にいと区切りつけたいので、どうしても年末が近づくと忙しくなります。
偵察山行は3名でいきました。
1日目:八王子駅 ⇒ 白馬駅 ⇒ 八方駅 ⇒ 八方池山荘(14:30発) ⇒ 唐松岳山荘キャンプ場(着17:30)
2日目:キャンプ場 ⇒ 唐松岳(9:00発) ⇒ 五竜山荘キャンプ場(11:00着) ↔ 五竜岳
3日目:キャンプ場(7:30発) ⇒ 大遠見山 ⇒ 地蔵の頭(10;30)
まだ雪が付いていない時期なので問題なく下見ができました。もちろん、行けるところは文明を使いましたが。
偵察山行で五竜山荘の前で記念撮影
富士山での雪上訓練は3度目です。
富士山の雪上訓練は、実際の合宿より厳しいこともあるので注意が必要です。
この年は、5合目の閉店した店の前にテントを張り寝たのですが、周りは雪と氷の世界です。
夜中はかなり冷えます。標高は2300mぐらいあります。
朝起きて、7合目に向けて歩き始めます。7合目付近で訓練できそうな斜面を探し訓練をするのですが、風が強く危険な状態です。
7合目は標高2800mぐらいです。晴天なのですが風が吹く寒さは半端ありません。
3時間ぐらい、滑落停止やザイルワークの訓練をして早々に下山しました。
冬合宿のコースも当然、下見と同じコースですが、雪が積もると道は一変します。特に前にパティーがいないと道を間違える可能性があり難易度はかなり向上します。
ヤマケイオンラインからの地図です
1日目: 白馬駅着(6:00) ⇒ 八方池山荘発(8:00) ⇒ 唐松小屋着キャンプ場(15:00)
2日目: 唐松小屋キャンプ場 ↔ 唐松岳 ⇒ 五竜小屋キャンプ場着(14:00)
3日目: 五竜小屋キャンプ場発(5:00) ⇒ 神城駅着(16:00)
予備日が2日あるものの2泊3日という初めての短い冬合宿でウキウキしていました。何と正月明けに、八方スキー場に別の友人とスキーをするという計画をいれました。
数日前から今年の冬合宿は、やばいということが分かり始めました。今年は雪が多く、年末は北アルプスは大荒れの予報です。
23時に八王子駅に集合して、先輩たちに見送られて夜行列車に乗り込みました。
白馬駅までは順調につきましたが、駅に着くなり登山者は登山補導所に来るようにと言われました。
行補導所前で記念撮影
行ってみると、ここ数日の積雪と今後も数日雪が降り続くということで、登山を中止するようにすすめられました。
これはヤバい!
でも我がパティは、とりあえず登り口まで行ってみようということで八方池山荘に向かいました。
何故か補導所から信越放送のクルーが我々をマークしてついてきます。
きっと無謀な登山者が、制止を振り切って登ろうとしているところを放送しようとしているのだと皆で言っていました。
結局、八方池山荘から我々は登りはじめました。
なんど信越放送のクルーもついてきます!
ワカンを着け慣れてない私のおぼつかない足元をカメラで写しながら、暫く一緒に歩きました。
最初から緊張してしまいました。
歩き始めてすぐに雪深くなってきます
そして、すぐ登り始めたのを後悔しました。
登っているパーティは我々だけです。もちろん自分たちが道をつくっていきます。
ここ数日の積雪ですぐにラッセルが始まりました。
今回は8名なので、隊の先頭でラッセルする時間は比較的短くてすみました。
以前春に槍沢で4人でラッセルしたときは、急傾斜の上すぐ自分の番が回ってきたので大変でした。
それでも進みは凄く遅く、1日中ラッセルをしている状況です。
結局3日間同じようなことを繰り返したのですが、結局唐松山頂まで届かず。
予備日を迎えた4日目、下山することにしました。
途中、テントを風で飛ばされるトレブルはありましたが、テント内は暖かく、快適です。
一昨年の八ヶ岳、昨年の甲斐駒・仙丈ヶ岳は結構寒かったので助かりました。
外張りをつけたテントの中は暖かく快適
下山の日は、天候が回復しました。
下山を始めるとすぐに登ってくる人とすれ違うようになりました。
今まで全く人に会わなかったのに、嬉しいような悲しいような感じです。
帰りはスキーで賑ぎあう八方スキー場のゲレンデの端を、スキーを楽しむ人たちの姿を横目でみながら下山しました。
八方尾根のスキー場で記念撮影
積雪期の山は、どの山行も記憶が鮮明です。
あまり、楽な登山はありませんでしたが、その記憶は宝ものです。
でも、今回のような山行は更に天候が悪化して道に迷ったり、雪崩が起きたら大変です。
くれぐれも無理をせずに楽しみましょう!
結局、この後東京にもどり、一日だけ実家でお正月料理を楽しみ、次の日また八方尾根にスキーをしに戻ってきました。